炭鉱と映画 その1 にあんちゃん

 チリの奇跡の生還は感動的でした!ウルウル・・・
 当日ブログを書きたかったのですが、今頃になってしまってすみません。

 さて、以前のブログでちらっと書いた、夫のライフワーク「炭鉱と映画」。先日は「1文字も書いていない」と書きましたが、ついに第1章第1節?が完成しました。某NGOの広報誌に掲載したものです。まだ道のりは長い。。。

おすすめの この映画 「にあんちゃん

 最近、ジャック&ベティで今村昌平監督の「にあんちゃん」(1959年作品)を見た。学生の頃テレビで見ていい映画だなと思ったのを覚えていたのだが、今回、大画面で見てあらためて強く魅かれた。
 「にあんちゃん」は、高度経済成長の初期、佐賀県にある廃坑寸前の小炭鉱を舞台に、両親を失った4人の兄弟姉妹が運命に翻弄されながらも、助け合いながらけなげに生き抜いていく話である。
 炭鉱を扱った映画には名作が多い。古くはジョン・フォードの「我が谷は緑なりき」、最近では「フラガール」や「リトル・ダンサー」がある。石炭を掘ると仕事は少数の人間ではできない。多くの人間が協力し合いながら、崩れやすく危険を伴う地下に坑道を掘り石炭を掘る。集団と危険。そうした仕事の性質が映画の表現となじむのだ。また石炭産業はその時の国内産業の要請や国家政策の推移により、基軸産業にもなり斜陽産業にもなった。町が栄え滅んでいく中、そこで生活している人の生きざまを映画はドラマティックに描くことができる。
 「にあんちゃん」が作られた1959年はエネルギー転換が図られていた。主要エネルギーを石炭から石油に転換するという国家戦略に従って、九州の至る所で炭鉱の廃山が相次いでいた。山が閉じ町が滅んでいくのと同時代だった。「にあんちゃん」は鶴の鼻炭鉱でロケをして撮られている。それが全編に他の作品にはない臨場感や懐かしさを漂わせているのだ。
 59年と言うと私が育った川崎にも同じような風景があった。炭鉱ではないのだが、歩いて遊びに行ける範囲にぼた山と呼ばれる石炭くずの山があった。叱られながらも全身真っ黒になるまで滑って遊んだことを覚えている。高度成長が進むにつれ、そうしたぼた山も姿を消した。鶴の鼻炭鉱も廃山になる。主人公のにあんちゃん(語り手の末娘から見て二番目の兄)が、廃山となったぼた山に立ち、将来、東京に行くと宣言するところで映画は終わる。
 「にあんちゃん」は当時10歳の少女、安本末子の日記が原作だそうである(こちらもファンがいるようで、2003年再版されたそうである。読んでみなくては!)。この兄弟たちが高度経済成長の中をどのように暮らしていったか気になったので調べてみたところ、それぞれ落ちついた生活を送っているようである。ホッと一息。

今村昌平 DVD Collection にあんちゃん

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