鎌倉に、梅の花を愛でに行きました。鎌倉での梅の三大名所が、瑞泉寺、荏柄天神、あともう一つ、ということで、前二者は鎌倉駅からバスですぐの鎌倉宮の近くなので、この二箇所に行って来ました。まだ紅梅はちらほらですが、白梅はきれいでした。鎌倉宮では、河津桜が艶やかなピンクの花を咲かせていました。
 あと、鎌倉には大きなお屋敷が多く、立派なお庭に美しい梅や椿が咲いているのを目にすることもしばしば。混雑の観光地に無理に行かなくとも、静かな道をふらふらそぞろ歩いているだけで、十分、観賞が可能です。
 若い頃の私は、さほど花に関心はありませんでした。四季の移ろいを愛でる余裕もなく、仕事に忙殺されていました。春になり、花が咲くのを心待ちにし、愛しく思えるようになったのは、中国で2年間暮らしてからのことです。
 私の赴任した街は、東北地方で、冬が長く、春になってもちっとも花が咲きません。3月、4月、花を求めて街を歩き回りましたが、梅・桃・桜、何一つ見つけることができませんでした。5月、初夏のような陽気とともに、突然、一斉に色とりどりの花々が開きます。花々の名はわからないのですが、白黒テレビからカラーテレビに一気に変わったかのような、色彩のまぶしさ!そしてあっという間に、新緑の候となります。梅雨はありませんでしたから、5月、6月は、緑の美しい季節でした。
 日本に戻り、まだ風は冷たいのに、2月になると、もう梅が可憐な花を咲かせてくれることに感動しました。3月から4月、桃と桜の乱舞には狂気せんばかり!こうして私は、ようやく、花鳥風月を愛でる心を持ち合わせられるようになりました。
 なお、鎌倉宮から瑞泉寺方面に曲がる角に、大和絵勧画館があります。ガイドブックにも載っているのを見かけない、小さな展示館ですが、ケースに隔てられることなく、直接、間近に、大和絵を鑑賞することができます。おすすめです。でも、開館は、土・日・祝日のみかもしれません。

  梅が香にのっと日の出る山路かな  松尾芭蕉
  梅一輪一輪ほどの暖かさ      服部嵐雪