源氏の映像化

 フィルムセンターで,長谷川一夫主演の映画「源氏物語」を見てきました。
 これまで,沢田研二主演のTVのスペシャル番組,アニメーション,宝塚などの「源氏物語」を見た記憶があるのですが,そのたび思うのは,「源氏物語」の映像化は難しい,ということ。原文は難解ですが,原文以上の感動を味わえたためしがありません。学生時代の恩師のA先生がおっしゃっていたのですが,光源氏は統一した人間像を結ぶのが難しい。そのことに,映像化の困難もあるのではないかと,これは私見です。(但し,大和和紀さんの「あさきゆめみし」は例外的に入れ込めます。私だけでしょうか? 私だけでないとしたら,その理由は何なのでしょうか?)
 で,今回見た映画も,例外ではなく,心揺さぶられるほどの感動は味わえませんでした。
 でも,興味深かったのは,原作にはない,淡路の上と良成の恋。もともと相思相愛だったのに,高貴な男性に縁付けようという父親の期待と光源氏の好き心とが相俟って,淡路は源氏のものにされてしまうのですが,ついに二人は真相を告白します。逆上した光源氏は良成を折檻するのですが,紫の上に藤壺とのことを考えるよう戒められ(光源氏藤壺の仲は,葵も紫も弘徽殿さえ知っています。大丈夫なの?),淡路と良成は手に手をとって源氏の邸を出て行きます。その幸福そうな表情! あとに残された源氏が,葵も藤壺も世を去り,淡路も行ってしまい,自分に残されたのは紫,そなた一人だけだ,と,二人で琴を弾く場面で終わります。この終盤の源氏の相対化は,もしかしたら原作以上かもしれない,と思いました。


 今夜は七夕。生憎の雨模様です。洞爺湖ではサミットが始まります。地球温暖化防止のキャンペーンの一環として,今夜,東京タワーやレインボーブリッジなどはライトアップならぬライトダウンをして,それで防止できるCO2排出量は夥しいものだそうですが,それなら,今夜だけでなく,継続して行うべきではないかと思います。繁栄の象徴も,適度でいいのではないでしょうか。。。