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 先月、オペラ「ヴォツェック」を見てきました。
 オペラというと、豪華絢爛、というイメージがあるように思いますが、これはそんなイメージとは程遠く、貧困ゆえの悲惨さ・陰惨さが描かれています。貧しい兵卒ヴォツェックは、僅かな収入を得るため、将校の使い走りをつとめたり、怪しげな医者の実験に体を提供したりしています。教会に支払うお金がないため、マリーとも結婚できていませんし、息子に洗礼を受けさせることもできません。貧困ゆえ、心も荒んでいき・・・


 『源氏物語』についても、王朝、華麗、といったイメージが醸成されていると思います。キーン先生も講演で、とにかくこの作品は「美しい」「美しい」と連発されていました。
 でも、ふと立ち止まって考えてみると、何が美しいのでしょう?
 冒頭部分でいきなり描かれるのは、身分による人の差別・選別、愛憎渦巻く女たちの争い・嫉妬・陰湿ないじめ・・・
 生母の身分の低さゆえ臣籍降下した光源氏が、今度は、相手の女性の身分によってその待遇を変えます。多くの女性の中でも理想的妻と呼ばれた紫の上にしても、第二部の苦しみは、「美しい」などと言える世界とは程遠いように思います。


 イメージ、ステレオタイプ、思い込み、偏見。これらを取り払って虚心に物事を見ることは、とても難しいと思います。でも、難しいからとあきらめず、心がけ続けていきたいと思います。