伊勢物語

 出光美術館で開催中の、「王朝の恋:描かれた伊勢物語」展に行ってきました。
 一般の鑑賞者向けのためか、「王朝の恋」だの「王朝のみやび」だの「恋の哀しみ」だの、情緒的なテーマ・解説・展示のしかたであった点は不満がなきにしもあらず。源氏と比較した伊勢の享受史を美術に焦点をあてて示してほしかったと思います。でも、出品作品はすばらしく、十分堪能できました。
 学部時代、平安文学専攻だった私にとって、『伊勢物語』は、自主ゼミで学んだ作品であり、また、解説の文章を書いて原稿料なるものをいただけた最初の作品でもあり、若い日の自分と重なり、いろいろ、思い出深く、感慨深い作品です。『源氏物語』はたしかに奥深く素晴しく、しかし複雑で高度すぎて、ちょっと手も足も出ない感があります。しかし、『竹取物語』や『伊勢物語』は、短編でコンパクトで、人物関係やそれを示す敬語表現も源氏ほどややこしくなく、読みやすいです。「心あまりてことば足らず」とは『古今集仮名序』の業平評ですが、『伊勢物語』の「昔男」はその業平をモデルとしているだけあって、厳密に解釈しようとするとどうかな、と思われるような歌でも、感覚的・心情的にはひじょうによく理解できます。千年以上の時空を超えて、人を恋する心は普遍だなあ・・・と思わせてくれます。手軽に読んでみようと思われる場合には、石田譲二氏の注・訳による角川文庫版がおすすめです。また、俵万智氏の『恋する伊勢物語』も、この作品を深く味読されたうえでの、心にしみるエッセイ集です。
 年明け以降、歌舞伎だ、オペラだ、美術館だと、遊んでばかりのようなブログです。確かに、こういう素材はブログを書きやすい。でも、それに頼りきってしまうのではなく、日々の生活の中から、ブログのネタを、見つけていきたいと思っています。
 また、M先生のブログは、顔文字あり、写真あり、で、読んでいて楽しいですね。私のは、字ばっかりで、読みにくくてすみません。これも、いずれ何とかしたいと思っているのですが。。。