時が・・・

 芥川賞受賞作の『時がにじむ朝』を読みました。

 私が中国に行ったのは、あの事件の1年後でした。ぺきんから夜行で1晩の、東北の地方都市でした。学生の中には、町の広場やぺきんでの集会に参加した人たちも大勢いました。でも、あの事件のあとの取締りの強化で、皆の口は重かったです。他の人がいる場では、決してあの件を口にしませんでした。誰がチクるかわからないから、友人だって信じられない、と言っていました。小説を読みながら、ぺきんからの列車の高揚の場面で、あの時のことを話してくれた学生のことを思い出しました。

 暗くなりすぎず、時の流れを淡々と語りつつ、それでいて、それぞれの人生の重みをずしりと描いた、すばらしい作品だと思います。