作例と実例

 めっきり涼しくなりました。昨夜、虫の声が聞こえました。でも、例年は8月下旬頃には聞こえてきていたような気がします。やはり温暖化でしょうか。。。


 リポートの課題3には、「実際の用例に即し」という指示があります。昨年度、これがあまりに守られなかったので、今年度のしおりでは下線を引き、リポート課題の取組み方でも注意を促したのですが、相変らず実行されているものは少ないです。。。教科書や参考文献で挙げられている作例は、あくまでも、その説明をするのに都合がいいように頭の中で組み立てられたもの。実際の用例は、果たしてその説明通りになっているか、なっていないとすればどのような問題があるか、ということをぜひ皆さんに考えてみていただきたいのですが。。。
 もちろん、言語研究は作例と実例と、二者択一、というわけではなく、両方のバランスをとってなされています。しかし、皆さんが利用する教科書や参考文献は、入門書・概説書の類いが殆どだと思いますので、実例を具体的に細かく検討していくスペースがないため、作例が大半を占めているように見えます。しかし、その説明・その例文が書かれる背後には、膨大な量の実例収集の蓄積があるのだ、ということを、忘れないでいただきたい、と思うのです。
 言葉は、人と人のコミュニケーションに日々用いられているものです。それを全く見ないで、頭の中で純粋培養されたものだけ見ていても、そこで得られた説明は、おそらく、日々の言語使用に実感をもってフィードバックされて来ないのではないでしょうか。。。?


 「実際の用例に即し」という指示を守っていないリポートを不合格にするだけでは、教員としてのつとめを果たしたとは言えません。「実際の用例に即し」、というのはどのような作業をいうのか。これを提示することが必要なのだと、反省・痛感しています。そこで、来週土曜からの後半部スクーリングでは、これを主眼とした、ワークショップ的な授業にしたいと思っています。


 実は、作例と実例について、下記の文章がとてもよくまとまっていると思います。印刷して皆さんに配布しようかと思いましたが、昨今、著作権法の適用が厳しくなっていて、大学の授業といえども治外法権ではないかもしれず、全文印刷はまずいかもしれないので、君子危うきに近寄らず、URLの紹介にとどめます(リンクは自由と謳われているので大丈夫でしょう)。各自、読んでおいていただけるよう、お願いします。
http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/nhnggk0304.html