つづき

B指示詞
 <基本課題1>の3Cはソ系(そっち・そちら)、4Fは「その・あの」どちらもあるということで、特に質問や意見は出ませんでしたが、どうでしょう?
 「あの伝説のグループが帰ってくる!」などと言われると、「あのグループ」は共有された既知のグループ、という感じで、なるほど、うまいキャッチコピーだな、と思います。


D授受表現
 「桃太郎」より辞書の記載に「あげる」の変化が反映されている、という調査結果は驚きでした。新作童話などでは「やる・あげる」どちらが使われているのでしょうか???
 「あげる」の変化は、「敬意逓減(低減)の法則」「尊敬語・謙譲語の丁寧語・美化語化」という大きな流れに見事にマッチしている例だと思います。井上史雄先生の『日本語ウオッチング』(岩波新書)『敬語はこわくない』(講談社現代新書)など参照してください。
 E敬語でも、丁寧語は謙譲語から、という話がありましたが、現代は特に、尊敬語・謙譲語が廃れ、丁寧語・美化語として使われる傾向が強まっています。つまり、もともとは「尊敬語」は「話題の中の動作の主体」、「謙譲語」は「話題の中の動作の対象」への敬意を表す表現であったわけなのですが、だんだん、話題の中の人物への敬意は表現されなくなり、「相手(聞き手・読み手)」が「動作の主体」である時には「尊敬語」、「動作の対象」である時には「謙譲語」が、それぞれ使われるようになってきたのです。「話題の人物」ではなく「相手」への敬意を表すということは、「素材敬語」ではなく「場面敬語・対者敬語」になっている、ということになります。
 また、「あげる」などに見られるように、対象や相手への敬意を表すというよりは、話し手の言葉の品格を保つため、「美化語」として敬語が使われる場合も多いです。上品なオバサマはこちらにも、敬語を多用なさいますが、我々に敬意を払ってくださっている、というよりは、オバサマご自身の品格を保たれるため、と考えるほうがわかりやすいでしょう。


 続きはまた今度