おみせ・2

 近くの八百屋さんに行かなくなったのには、もう一つ理由がありました。


 そこは、昔ながらの、お客さんとフレンドリーに世間話をしながら買い物をするタイプのお店だったのですが、フルタイムで働いている頃は、夕方、帰り道に寄って、「仕事?大変だねえ」というおじさんの言葉も時候の挨拶と何ら変わらなかったのですが、退職後、昼間買いに行くようになると、そのたび、「今日は仕事は?」と聞かれるのがだんだん辛くなってきました。ある時、もう言われたくないな、と思って、「仕事やめたんです」と言ってみたところ、「やめたの?ダメだよ、働かなきゃ」。
 色々悩んだ末の退職だったので、夫とも十分話し合い自分たちでは納得した上での決断だったので、それで、次の人生の道を模索して自分なりに懸命に毎日を過ごしていた時だったので、それらを全否定されたようで、悪気はない、とわかっていても、正直ショックで、顔色が変わってしまうのを、鏡があったわけではありませんが、自分でも感じていました。
 玉ねぎ事件は、それからあまり日の経たない頃でした。。。

 
 その八百屋さんの隣に酒屋さんがあり、夫の愛飲するビールを当初はそこで買っていたのですが、やがてビールも、駅の向こうの別の酒屋さんのほうが安いということが分かり、鞍替えするようになりました。もとの酒屋さんはもともと、そんなに愛想がいいわけでなく、毎日せっせと買っていた頃もお愛想の一つも言ったことがなく、大して胸の痛みも覚えず乗り換えることができました。
 でも、そうなってからでも、特にその酒屋さんの態度は変わることなく、道で会えば普通に挨拶が続いています。だから、料理に使う焼酎とか、ちょっとしたものを買う時、今でもたまにその酒屋さんで買うことがあります。


 お店は、お客とのコミュニケーションが大事、と言いますが、必ずそうとは言い切れない。。。のでしょうか?
 自営業の家庭で暮らしたことがないので分かりませんが、つくづく、大変だなあ、と思います。