最近読んだ本

 阿部謹也氏の著書を、立て続けに猛烈な勢いで読みました。
 日本人論の名著の一つとして名高い『「世間」とはなにか』(講談社現代新書)は以前読んだことがあり、その所説も興味深かったのですが、ご本業の西洋中世史の、名著の誉れ高い『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)を初めて読みました。講演集『日本社会で生きるということ』や『阿部謹也自伝』も読みました。
 研究の、著作の底流にある、人間への深くあたたかい慈愛あふれる眼差しに感動しました。オススメです!

 『ハーメルン』の最後の章に、ドイツの老研究者の紹介がありました。教員・校長としての勤務のかたわら、こつこつと歴史の研究を積み重ね、この伝説にも精力を注いでいました。やがて60代のころ、30代の若く優秀な研究者とめぐりあい、ご自身は若手研究者のバックアップに尽力され、一方、ご自身の研究も進められ、博士学位論文を書き上げられたのは78歳の頃、ということでした。ハーメルン伝説の解明が進んだのは、多くの人の長年の努力の結晶に他なりませんが、この2人+阿部先生の3人が果たされた功績は、中でもきわめて大きいものだと思います。

 ついで、ちょっと前のベストセラー『さおだけ屋はなぜつぶれないか?』(光文社新書)を読みました。会計、という未知の世界に初めて接してみました。面白かったです。在庫は罪庫、保管の場所代や管理の人件費がかかる、いつか使うは絶対使わない。これらの言葉を胸に、捨てられない病・もったいない病と闘い、荷物のスリム化を目指しています!

 そして、今読んでいるのは、滝浦真人『日本の敬語論』(大修館書店)。「敬語は日本語の美しさのシンボル」という言説が、明治の国民国家・国語成立期に登場してきたあたりを読んでいます。現在でも敬語ほど、「正しい」とか「美しい」といった評価基準で語られることの多い日本語の分野はありません。国を愛することは悪いことではありませんが、根拠のない主観的なラベル貼りは、ことばに正面から向かい合い考えてみようとするには邪魔になるものだと思います。無意識にとらわれている思い込みを、可視化・客観化して、冷静に見つめてみることが必要だと思います。