旅の報告(6)ロンボク編

090823-01

 ロンボク島は観光地として名高いバリ島の東に位置している。飛行機なら30分という近さだ。住民の約9割がSasak人でイスラム教徒であるという。西ロンボクはバリ島を満喫した外国人向けのビーチ・リゾートとして、近年、観光地化としての開発が進んでいる。バリ島と結ぶ飛行機の空港も船の港も、どちらも西ロンボクにある。しかし、東ロンボクにはまだ開発の波は及んでいないようである。
 草の根援助運動(P2)は、東ロンボクで活動するNGO・ADBMIのロマ・ヒダヤット氏と、昨年12月横浜で面談をして、現地活動に対する聞き取りを行った。
 それによると、インドネシア政府による統一への圧力や貨幣経済の侵入などにより、Sasakの伝統的な社会制度・経済活動・文化・生活は、現在、崩壊の危機に直面している。貧富の差が拡大し、貧困層は海外へ出稼ぎに行く者が増えている。しかし、それにまつわるトラブルも多い。ADBMIは、そのようなトラブルに対処する一方、村民と協議しながら、有機農業の推進、伝統工芸や伝統芸能についてのトレーニング、エコロジーや地域文化を大切にした観光資源の育成、若者に対する起業支援などを行っている。ADBMIは、村民達が出稼ぎに頼ることなく地域の文化を大切にしある程度の現金収入を確保しながら生活できるような状態を目指して活動している、という。
 ADBMIは、民芸品などをフェアトレード商品として販売し、住民の生活資金の基盤にしたいと考えているが、具体的な製品の選定や販路の開拓などについてP2の協力を得たいと述べている。今回の調査活動では、現地の様子を実際に確認するとともに、P2がすでに展開している事業の中でのフェアトレードなどの具体的な支援活動の位置づけ・実現可能性について、検討・協議を行いたい、と考えている。具体的調査項目は下記の通りである。
1)ADBMIが対象とする地域の概要 
面積 人口 宗教 平均寿命 主要産業と就業率 平均年収 教育 進学率
インフォーマル労働の内容 地域共同体の内容とその進行または崩壊状況
2)NGOとしてのADBMIの活動内容
  スタッフ人数(有給・無休の割合) 活動内容と資金の出所
  事業(資金獲得活動)の内容 自治体との連携の有無
  コミュニティーNGOとの関係の良好度合 活動の課題
3)具体的協力活動について
 現在の商品・販路 価格(材料費・送料) 郵送・送金方法 連絡方法

 コーランの夜が明けた。リドたちADBMIのメンバーは、米倉を兼ねた東屋で雑魚寝したようだ。敬虔なイスラム教徒である彼らも、やはり、夜通しのコーランに眠れなかったと言っていた。(彼らは、我々のアテンド中でも、時刻になるとお祈りに行く。これまでのジャワのNGOではそういうことはなかった。まだ、リドの携帯の着メロはコーランであった!)
 朝、Perigi村を散歩する。デディとムスが同行。リンジャニ山の雄姿が素晴らしい。
 子供がぞろぞろついて来るが、集落と集落の境界らしきところに来るとその先はついて来なくなる。
 写真をとっていいか聞くと、女の子たちは恥ずかしがって逃げてしまう。男の子たちははにかみながらもOKしてくれた。


 
 HPやパンフレットに子供の笑顔の写真が効果的なのは明らかだが、不特定多数の人々の目に触れるところに出すことについては、きちんと説明して、本人や親の同意を得る必要があると思う。貧富の差は、家屋に歴然と表れているが、これについても、見知らぬ者が無断で写真撮影をするのは無礼で不快感を与えるだろう。手間はかかるが、丁寧に誠実にお願いしていくべきだろう。

 
 帰って来たら朝食が準備されていた。卵、鶏肉、ご飯、野菜炒め、お茶。おいしく有難くいただいた。村人たちはもう夜が明けているので誰も何も食べない。衆人環視の中で食べていると、異教徒であることをしみじみ感じる。


 この村は、古い伝統を多く残しているので、国内外から大勢の訪問者がある、とリドたちは言う。しかし、それにしては村人たち、特に子供たちの注視が物珍しさを語っている。一般の観光客が訪れることは、まず、なかろう。人類学者、民俗学者、援助関係者などだろうか。


 泊めていただいた家のご主人に御礼を述べ、出発。村役場前でデディ、ムス、エルニと別れる。
 ところが、その後、すれ違うオートバイにことごとく、皆が、特にエニが大声で何事か叫ぶ。リドさんによると “Erni will join us.”
 国道のGSで給油し、村道との合流点に戻るとちょうどその時、デディのバイクでエルニが到着。エルニに来るように伝えて、と、すれ違うバイクの村人たちに伝言を頼んでいたのだろうか? 携帯はどうしたのだろう? ともあれ、こうしてエルニ再合流。


 昼前、Selongのホテルに着く。エアコンもお湯もなく、トイレもイスラム式。もう1軒エアコン付きのホテルもあるが、モスクの近くなので、こちらのほうが静かだろう、とのこと。小ぎれいなのでここに決める。Bapakが大変親切。チェックインの時、パスポートを預けるように言われる。コピーを持参してよかった。近隣に食事がとれるところは見当たらないが、頼むと、多分何か買ってきてくれる。